お出掛けをした帰り道、
「せっかくオメカシしたんだもの」私は街中をぶらぶら歩き出した。
洒落たショーウィンドウが並ぶ中、間口の狭い一軒の店に足が向いた。
そこだけは何ともいえず庶民的だ。
店先には北海道○○産の大豆が置いてある。
随分キレイなお豆ね。ああ、ちょうど豆を切らしていたっけ。
一歩入ると北海道○○産の昆布が待っている。
肉厚で立派なものが、結構なお手頃価格だ。そうだ、昆布ももうすぐなくなるわ。
そこは都内の北海道だった。
せっかく北海道まで来たのだ。ご当地のものはここでしか手に入らない。
こうして、一歩、また一歩、店の奥へ、また奥へ、いざなわれるままに歩みを進めた。
一歩進めば、買い物かごには商品が一つないし二つ入る。
ウナギの寝床のような店内を隈なく点検し、一番奥のレジに着くと、
溢れんばかりの私のカゴは、もはや片手で持つことができない。
「重いので袋は二つに分けて、それぞれ二重にしておきますね。」
気の利いた店員さんである。
否、それ以前に、店の構造も品揃えも、そのうえ価格まで、気が利きすぎている。
珍しくオメカシをして街に出た私は、
大豆やら昆布やらの入った大きな袋を両手に下げて、やっとのことで帰宅した。
一人では消費しきれない食料をお裾分けしに実家へ帰ると、母が言った。
「お父さんも好きだったわね、アンテナショップ。」
そう、父が街に出ると、よくアンテナショップに寄っては、
大黒様のように大きな袋を幾つも提げて帰ってきたものだ。
そしてそれを見ては思ったものだ。
「遠くまで旅に出たわけでもあるまいに、物好きなオヤジさんだ」と。
何のことはない。気付けば父と同じことをしていた。
どうせ似るなら、他のところで似たかったなぁ。