小学生の頃、同級生のお誕生会に招かれて、そこでの楽しかった様子を報告しても、
両親からの返答は決まって、「ヨソはヨソ、ウチはウチ」であった。
我が家の誕生日にはプレゼントもケーキもなく、
その代り、朝食前には決まって父からこんな訓示が垂れられた。
「誕生日だからと言って他人から祝ってもらおうだの、ましてやプレゼントをもらおうだのという浅ましい気持ちは捨て去らねばならない。
誕生日というのは、日々世話になっている周りの人たちに、改めて感謝すべき日だ。
『お蔭さまで、また一つ無事に年を取れました』と、お礼をして回ってしかるべきだ。
こうした意味では、毎日が誕生日と心得よ。」
こうして十数年後、「誕生日なんて興味ナシ」という、冷めて、ひねくれた高校生が出来上がった。
我が家の誕生日にはプレゼントもケーキもなく、
その代り、朝食前には決まって父からこんな訓示が垂れられた。
「誕生日だからと言って他人から祝ってもらおうだの、ましてやプレゼントをもらおうだのという浅ましい気持ちは捨て去らねばならない。
誕生日というのは、日々世話になっている周りの人たちに、改めて感謝すべき日だ。
『お蔭さまで、また一つ無事に年を取れました』と、お礼をして回ってしかるべきだ。
こうした意味では、毎日が誕生日と心得よ。」
こうして十数年後、「誕生日なんて興味ナシ」という、冷めて、ひねくれた高校生が出来上がった。
そんな私が、初めて自分の誕生日を祝ったのは、大学一年生の時だった。
経済的な自立も不確かなままとは言え、
親元を離れ、小さな小さな私だけのお城で迎える初めての誕生日は、
何だかとても特別なものに思えた。
これまで、誕生日をどんな風に祝ってもらいたかったんだろう?
初めての一人きりの誕生日を、どんな風に祝いたいだろう?
自分の意のままにできる誕生日を、どんな風に過ごしたいだろう?
自分の意のままにできる誕生日を、どんな風に過ごしたいだろう?
それまで考えてもみなかったような疑問を、自らの胸の奥に投げかけてみた。
そうだ、ケーキだ!誕生日といえば、ケーキにロウソクだ!
そして、お祝いの言葉だ!
お友達と一緒に「おめでとう!」と言って、ロウソクの火を吹き消そう!
小学生の頃、同級生達が極々普通に執り行ってきたお誕生会のプログラム中で、
最も平凡、かつ、最も大切な部分を、自分の城でやってみたい。
それが、胸の奥からの答えだった。
一ヶ月も前から計画を立て始め、一週間前からケーキを作り始めた。
授業を終えて帰宅すると、日持ちするケーキから順に、毎日一つずつ焼いた。
前日ともなると、部屋の外にまで、甘いにおいが漂った。
身近な友人達には、ケーキを一緒に食べて、一緒にお祝いして欲しいことと、
その日は24時間welcome体制であることを、折に触れて伝えた。
待ちに待った誕生日の最初の瞬間のために、大好きな緑茶を入れるべく、
ヤカンを火に掛けた時、ドアがノックされた。
ヤカンを火に掛けた時、ドアがノックされた。
戸を開けると、仲良しの友人が立っていた。
「10分前、おめでとう!」という言葉と共に入ってきた彼女の手には、
ついさっき実家に車を飛ばして収穫して来たばかりという、
立派な立派な椎茸が、私の大好物の椎茸が、
それはそれは、いっぱい載せられた籠があった。
立派な立派な椎茸が、私の大好物の椎茸が、
それはそれは、いっぱい載せられた籠があった。
「5分前、おめでとう!」まずは緑茶で乾杯した。
12時の時報がラジオから流れると、
お決まりの「ハッピ バースデー、トゥユー」を歌いながら、ケーキに立てたロウソクに火をつけた。
そして、「おめでとう!」と叫んでから、吹き消した。
お決まりの「ハッピ バースデー、トゥユー」を歌いながら、ケーキに立てたロウソクに火をつけた。
そして、「おめでとう!」と叫んでから、吹き消した。
ロウソクの炎を吹き消すのは、思いの外、肺活量を要した。
解けたロウが、ケーキの上に飛び散った。
消した後は、ちょっと臭かった。
「ロウソクを立てるのは、他人が食べるケーキに限る」我々は一つの教訓を得た。
その後は、何が何だか覚えていないが、ケーキと緑茶と白菜漬をお供に、
一晩中夢中になってオシャベリを続け、夜が明けた。
解けたロウが、ケーキの上に飛び散った。
消した後は、ちょっと臭かった。
「ロウソクを立てるのは、他人が食べるケーキに限る」我々は一つの教訓を得た。
その後は、何が何だか覚えていないが、ケーキと緑茶と白菜漬をお供に、
一晩中夢中になってオシャベリを続け、夜が明けた。
「実はまだ誕生日始まったばかりだよね。おめでとう」
彼女は、かすれ気味の声で何十回目かの祝辞を述べ、帰っていった。
その日のうちに、何人かの友人達が、入れ替わっては、
「おめでとう!」を言いに、私の小さなお城を訪ねてくれた。
親切な客人たちに、私はお手製のケーキを振舞った。
この日のために、「何を望むか?」を自らに問いかけ、
その答えを実現すべく、自らの手を動かし、また、友人達には協力を仰いだ。
自らの手を動かした分だけの成果(製菓)が現れ、また、友人達は皆、快く協力してくれた。
結果として得られたものは、そもそも望んでいた「ケーキ」と「ロウソク」と「おめでとう!」に加え、
それ以上の、得体の知れない『何か』が、確かに感じられた。
ケーキとロウソクと「おめでとう!」で祝った、初めての誕生日は、
たったそれだけの、安上がりな誕生日だったけれど、
本当に『何か』が誕生したのかもしれない。
「誕生日、祝ってみるのも悪くない」
ちょっと前までは、冷めて、ひねくれた高校生だった私の耳の奥を、
そんな言葉が、風のように通り抜けて行った。
彼女は、かすれ気味の声で何十回目かの祝辞を述べ、帰っていった。
その日のうちに、何人かの友人達が、入れ替わっては、
「おめでとう!」を言いに、私の小さなお城を訪ねてくれた。
親切な客人たちに、私はお手製のケーキを振舞った。
この日のために、「何を望むか?」を自らに問いかけ、
その答えを実現すべく、自らの手を動かし、また、友人達には協力を仰いだ。
自らの手を動かした分だけの成果(製菓)が現れ、また、友人達は皆、快く協力してくれた。
結果として得られたものは、そもそも望んでいた「ケーキ」と「ロウソク」と「おめでとう!」に加え、
それ以上の、得体の知れない『何か』が、確かに感じられた。
ケーキとロウソクと「おめでとう!」で祝った、初めての誕生日は、
たったそれだけの、安上がりな誕生日だったけれど、
本当に『何か』が誕生したのかもしれない。
「誕生日、祝ってみるのも悪くない」
ちょっと前までは、冷めて、ひねくれた高校生だった私の耳の奥を、
そんな言葉が、風のように通り抜けて行った。