数年前、年齢を概数で表現する「アラ○○」という新語が流行り始めたころのこと。
今では、新語と呼ぶには少しばかり貫録さえ感じられるこの表現、
30歳前後は、「around 30」を縮めて「アラサー」、
40歳前後は、「around 40」を縮めて「アラフォー」、
60歳前後は、「around 還暦」を縮めて「アラ還」、
といった具合で作られる。
親しくしている大先輩方は、早速これらを応用して、
「私、『アラ古稀』だわ」
「彼女なんて、『アラ傘寿』でしょ?まだまだ綺麗よね」
「あの方、いつお会いしてもお元気ね。おいくつかしら?え、『アラ卒寿』?」
「うちの母が、『アラ白寿』でね・・・って、これじゃぁ概数になっていないわ」
・・・
などと、しっかり使いこなしていた。
そんな会話の中、大先輩の一人が、若手の先輩を『アラフォー』と呼んだ。
40歳代卒業を目前に控えた彼女は、少し困った様子で言葉を漏らした。
「私が『アラフォー』で、問題ないかしら」
すると、くだんの大先輩は言った。
「心配ご無用。
今は、人生80年の時代でしょう。
40歳はそのド真ん中。
だから、誰もみな、40歳を中心に『around 40』なのよ。
生まれたての赤ん坊から、80歳のご老人まで、みんなね。
ただ、『aroundの半径』が異なるだけ」
なるほど、と各自が「アラフォーの『aroundの半径』」を求めた。
中心からの距離が遠かったり近かったり、
「(自分の年齢)-40」の符号が、プラスだったりマイナスだったり、
それぞれが、それぞれに、それぞれの「アラフォー」だった。
太陽系の惑星たちが、太陽を中心に、あるいは遠く、あるいは近く、それぞれぐるぐる回るように、
世界中のみんなが、40歳を中心に、あるいは遠く、あるいは近く、それぞれぐるぐる回る様子が、
その場の全員の頭の中に、共通の絵として思い描かれるのを感じた。
そして、その場の全員が、共通の結論に至った。
生きている限り、人は皆、アラフォーなんだ。
無数のアラフォーたちが構成する世界は、宇宙そのものなんだ。
念のため付け加えると、
この会話の続きにおいて、
「人生80年とは言うけれど、
80歳を越えた方々にも、いつまでも『アラフォーの宇宙』で元気に回り続けてもらいたいね!」
という、もう一つの結論に至ったことは、言うまでもない。
2013年2月23日土曜日
2013年2月16日土曜日
煩悩親子
夏休みやら正月休みやらを取っては滞在しているお宅がある。
2012年から2013年への年越しも、やはりそのお宅で過ごした。
ママのご機嫌なご馳走が、溢れんばかりにテーブルの上を埋め尽くしたら、
パパは全員にシャンパンを注ぎ分け、
弟くんはテレビのチャンネルを「ゆく年くる年」に合わせる。
テレビから流れる12時ちょうどの除夜の鐘に合わせ、我々はシャンパンで乾杯した。
例年通りに新年を迎え、それぞれがご馳走をほおばり始めると、弟くんは私に尋ねた。
「除夜の鐘って、さっきの一回しか鳴らさないの?」
「108回撞くって、よく聞くよ」
「なんで108回なの?」
「煩悩の数だから、らしい。鐘を一つ撞くたびに、煩悩が一つずつ除き清められるのかな」
さっきまで黙々と、否、モグモグと、ご馳走のお皿に顔を突っ込みそうな勢いだったパパは、
突然顔を上げ、背筋を伸ばし、胸を張って、襟まで正して言った。
「俺の煩悩は桁が違う。108なんぞじゃ尽きないぜ!」
すると弟くんは、パパよりもいっそう背筋を伸ばし、胸を張って、襟を正し、そして言った。
「そもそも僕の煩悩は、鐘の音なんぞで逃げ出さないぜ!!」
2012年から2013年への年越しも、やはりそのお宅で過ごした。
ママのご機嫌なご馳走が、溢れんばかりにテーブルの上を埋め尽くしたら、
パパは全員にシャンパンを注ぎ分け、
弟くんはテレビのチャンネルを「ゆく年くる年」に合わせる。
テレビから流れる12時ちょうどの除夜の鐘に合わせ、我々はシャンパンで乾杯した。
例年通りに新年を迎え、それぞれがご馳走をほおばり始めると、弟くんは私に尋ねた。
「除夜の鐘って、さっきの一回しか鳴らさないの?」
「108回撞くって、よく聞くよ」
「なんで108回なの?」
「煩悩の数だから、らしい。鐘を一つ撞くたびに、煩悩が一つずつ除き清められるのかな」
さっきまで黙々と、否、モグモグと、ご馳走のお皿に顔を突っ込みそうな勢いだったパパは、
突然顔を上げ、背筋を伸ばし、胸を張って、襟まで正して言った。
「俺の煩悩は桁が違う。108なんぞじゃ尽きないぜ!」
すると弟くんは、パパよりもいっそう背筋を伸ばし、胸を張って、襟を正し、そして言った。
「そもそも僕の煩悩は、鐘の音なんぞで逃げ出さないぜ!!」
2013年2月1日金曜日
自分の足で歩けるうちに
このところ、父の言葉が気にかかる。
「自分の足で歩ける間は、それを何とも思わなかった。
歩けるうちに、歩くんだ。
歩きたいだけ、歩くんだ。
歩ける限り、歩くんだ」
「自分の足で歩ける間は、それを何とも思わなかった。
しかし、自分の足で歩くってことは、実に大変なことなんだ。
これは、歩けなくなってみて、初めて分かったことだ。
お前たちは、まだ自分の足で歩ける。
だから、今のうちだ。
自分の足で歩けるうちに、行きたいところに行って、歩きたいだけ歩くんだ。
自分の足で歩けるうちに、行きたいところに行って、歩きたいだけ歩くんだ。
そうしなくちゃいけない。
歩けるうちに、歩くんだ。
歩きたいだけ、歩くんだ。
歩ける限り、歩くんだ」
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