電話の向こうで弟くんは言った。
「マスクをしないで表に出ると、近所の人たちから陰口を叩かれるんだ。
でも、どこに行っても買えないし、どうにもできないよ。」
翌日、偶然にも知人からマスクを10枚もらった。
「はんぶんこしよう。これでもう、誰からも悪く言われない。」
メモを添えて5枚を弟くんに送った。
あくる晩、電話が鳴った。
ひとしきりお礼を述べた彼は、消毒液を持っているかと尋ねた。
「あるよ」という私の答えに少しガッカリした様子だ。
どうやら、アルコールを手に入れたので、それをお返しにと思ったらしい。
彼はちょっと考えると、web会議システムに切り替えようと言いだした。
見覚えのある台所には、段ボール箱とバーベキュー用の網がある。
「これをこうして、あれをああして……。」
説明の行きついた先は、「燻製の作り方」だった。
お裾分けのお返しに、燻製の作り方を教えてくれたのだ。
ひとつ、週末に試すとするか。
なにしろ、特売の鮭の切り身が、最高級のスモークサーモンに変身するらしい。
おいしくできたら、今度は誰にお裾分けしようかな。