その女の子は、私の姿を見るなり、堰を切ったように話し始めた。
「学校の友達から、『電卓による相性診断』を教えてもらったの!」
それは、二人の氏名のフリガナを使用して、相性の良さをパーセンテージで求めるものだった。
(1) 一人ずつの氏名のフリガナを、一定のルールに従って自然数に変換する。
(2) 上記(1)により得られた二つの自然数を足し合わせ、一つの自然数を得る。
(3) 上記(2)により得られた自然数を、2で割り続け、整数部分が2桁になったところで止める。
(4) 上記(3)で得られた数値の後ろに「%」を付ける
こうして得られたパーセンテージが、「二人がうまくいく確率」だそうな。
彼女と私の氏名を例に、実際に電卓を叩きながら、説明がなされた。
「ほら」と、画面に表示された「54.78某」との結果を指さした彼女は、
ちょっとばかり心細そうに言った。
「でもね、これ、当てになるか分からない。だって、50%より低くならないって、友達が言ってた」
確かに仰る通り。
上記(1)では、フリガナの文字数と等しい桁数を持つ自然数が得られる。
これは一般的に見て、まず3桁以上のものであろう。
従って、上記(2)で得られる自然数もまた、3桁以上のものである。
ここで、上記(3)の操作において、「整数部分が2桁になったところで止める」のが味噌だ。
整数部分が3桁の数の中で、最小のものは「100」である。
100÷2=50
つまり、この50%こそが、この相性診断の結果として得られる、最小値なのだ。
逆に、50%より低い結果、例えば40%という結果を出そうと試みたとする。
そのためには、上記(3)において、次のような経過をたどる必要がある。
・・・
160÷2=80
80÷2=40
しかし実際には、80という数が表れた時点で整数部分は2桁になっている。
従って、この段階で「÷2」の操作を止めなければならない。
すると、得られる結果は、40%ではなく、80%となる。
やはり、どう頑張っても、50%より低くはならないのだ。
さて、「『二人がうまくいく確率』が絶対に50%より低くならない」ことを理由に、
「この相性診断は当てにならない」と言えるのだろうか?
俄かには判定しがたい疑問である。
ただ、敢えて論点を少しばかりずらして、私の心情的なところに目を向けるならば、
「『二人がうまくいく確率』が絶対に50%より低くならない」ことをこそ理由に、
むしろ、この相性診断を当てにしたい。
これに従うならば、
もしも、誰かとの間で意思疎通がうまくいかないように思えたとき、
それは、50%以下の「うまくいかない」道を無理矢理に押し進もうとしていることになる。
辺りを見渡せば、そこには残り50%以上の「うまくいく」道が開けているはずだ。
たとえ、後者の道がすぐには見つからなかったとしても、
兎にも角にも、選択肢となり得る全ての道のうち、50%以上は「うまくいく」方に向かっている。
しからば、折に触れて、ちょっと一息入れがてら、辺りの景色を見渡してみよう。
そう思うと、この相性診断は、私にとって救いと言える。
「・・・ごめん、ごめん。つい、自分のことばかり話してしまった。退屈だったかな?」
我に返った私をまっすぐに見つめながら、その女の子は穏やかに、かつ、はっきりと言った。
「ううん。この『電卓による相性診断』、私も当てにします」
2013年5月20日月曜日
2013年5月16日木曜日
イチゴ診断
一般的に通用するかどうかは兎も角として、
我らが実家においては、
「中年の進行度合いは、愚にもつかないダジャレに対する弱さで測れる」と信じられている。
ある朝、ベランダに出ると、今年最初の苺の花が咲いていた。
実家に帰り、それを家族に報告した。
「苺だけに、一語にして申しますと、一号開花のニュースです」。
すると兄弟たちは、それぞれにそれぞれの反応を示した。
こんなとき我が家では、
(1) 思わず顔をほころばせた場合、中年初期症状
(2) 「ぷっ」と吹き出した場合、中年の症状が進行中
(3) 反射的に涙を流して爆笑した場合、中年も末期症状
と、まことしやかに言われている。
実家メンバーの誰がどの程度の進行度合いと判定されたか、については、
プライバシー保護の観点から、ここでは触れないでおくことにしよう。
我らが実家においては、
「中年の進行度合いは、愚にもつかないダジャレに対する弱さで測れる」と信じられている。
ある朝、ベランダに出ると、今年最初の苺の花が咲いていた。
実家に帰り、それを家族に報告した。
「苺だけに、一語にして申しますと、一号開花のニュースです」。
すると兄弟たちは、それぞれにそれぞれの反応を示した。
こんなとき我が家では、
(1) 思わず顔をほころばせた場合、中年初期症状
(2) 「ぷっ」と吹き出した場合、中年の症状が進行中
(3) 反射的に涙を流して爆笑した場合、中年も末期症状
と、まことしやかに言われている。
実家メンバーの誰がどの程度の進行度合いと判定されたか、については、
プライバシー保護の観点から、ここでは触れないでおくことにしよう。
2013年5月6日月曜日
不眠症
どうにも眠れない夜が幾晩か続いた。
これは不眠症というものだろうか。
実家に帰った折、家族に相談すると、驚きと心配との混ざった様子で尋ねられた。
「目が冴える感じ?それとも、眠いのに眠れないの?」
「眠たいけど、布団に入って目を閉じても全然眠れない」
「布団の中で『眠れない』と思っているのは、どれくらい長い間?」
「ずーっと長い間」
「具体的には、何時間くらい?」
「……5分くらいかな。ご質問に合わせて単位を直すなら、1/12時間くらい」
「それは不眠症どころか、人も羨む寝つきの良さだ。贅沢を言うな」
兄弟たちは口々に私を責めた。
確かに、一般的には仰る通り、かもしれない。
しかし当の私にとっては、この5分間こそが如何とも耐え難く、長い長いものなのだ。
誰か、この辛さを分かってくれる人はいないだろうか。
すると、それまで黙って聞いていた母が口を開いた。
「枕に頭がついた時点で、まだ眠っていないなんて、さぞ辛いでしょうね」
どうやら私は、間違いなく母の血を引いた子らしい。
これは不眠症というものだろうか。
実家に帰った折、家族に相談すると、驚きと心配との混ざった様子で尋ねられた。
「目が冴える感じ?それとも、眠いのに眠れないの?」
「眠たいけど、布団に入って目を閉じても全然眠れない」
「布団の中で『眠れない』と思っているのは、どれくらい長い間?」
「ずーっと長い間」
「具体的には、何時間くらい?」
「……5分くらいかな。ご質問に合わせて単位を直すなら、1/12時間くらい」
「それは不眠症どころか、人も羨む寝つきの良さだ。贅沢を言うな」
兄弟たちは口々に私を責めた。
確かに、一般的には仰る通り、かもしれない。
しかし当の私にとっては、この5分間こそが如何とも耐え難く、長い長いものなのだ。
誰か、この辛さを分かってくれる人はいないだろうか。
すると、それまで黙って聞いていた母が口を開いた。
「枕に頭がついた時点で、まだ眠っていないなんて、さぞ辛いでしょうね」
どうやら私は、間違いなく母の血を引いた子らしい。
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