2012年3月22日木曜日

水も滴る晴れ女

何を隠そう、私も、母譲りの晴れ女である。
これまで、天候のお蔭で困ったりガッカリしたり、という経験がない。

そんな私に、この春最初の遠足のお誘いがあった。
そして、悪天候のため遠足は延期された。

遠足がフイになったその日、「珍しいこともあるものだ」と、台所で食器を洗っていると、
靴下が湿っているように感じられた。
「すすぎの水が跳ねたかな?」と、足元を見ると、
シンク下の収納扉から、ポタリポタリと水が滴り落ちている。
このため、私の靴下は実際に湿って・・・、否、見る見るうちにびしょ濡れになった。

「水が滴り落ちる原因は何だろう?」と、収納扉を開けた。
その瞬間、
シンク下の収納スペースから、大量の水が一気に流れ出た。

シンクの排水口から下に続く管が、何かの拍子にスッポリと外れたらしい。
すすぎの水は、排水口から進むべき管へ導かれることなく、全て収納スペースに流出した。
そしてそれが、収納スペースに溜まりながら、扉の隙間からポタリポタリと滴り落ち、
私の靴下を徐々に濡らしていったのである。

扉を開けたことで、いっぺんに状況が把握できた。
同時に、いっぺんに我が城の台所は水浸しとなった。

これまで、晴れ女の私に降りかかることを避けてきた雨粒たちが、
この日は皆で束になり、台所に押し寄せて来たようだ。

ありがとう。
これまでの幸運を、つくづく噛み締めた一日だった。

2012年3月19日月曜日

晴れ女

は晴れ女である。

独身時代の母は、時折、職場の仲間と一緒に登山を楽しんだらしい。
彼女がいれば天気の心配は要らない、というのが、
登山仲間の間では、神話のように語り継がれていたそうだ。

若い頃から、母は晴れ女だったらしい。

結婚後の母は登山をしないので、山での晴れ女ぶりを確認することが難しい。
とはいえ、母と二人で旅行やらピクニックやらに行って、降られたことは一度もない。
しかも、私が親孝行休暇を取るのは、梅雨時と決まっている。
更に、私は母を誘う場所として、雨降りの多い地域を、つい選んでしまう。
それでも、東京に帰って親子で口を揃えて発する言葉は、
「我々に必要なものは、傘でなく日焼け止めクリームだ」である。

やはり今でも、母はかなりの晴れ女らしい。

ところで、真面目一筋の彼女は、
たとえ台風接近により暴風雨に対する注意報が出ていても、ミゾレや雪が降っていても、
行き着けのスーパーマーケットの『全品○割引!』への参戦だけは欠かさない。
家族の反対を押し切って、彼女が玄関を出ると、不思議と雨風は弱まる。
そして気を揉んで過ごした何十分かの後、帰宅した彼女を玄関で出迎えると、
不思議なことに、彼女の傘も、合羽も、長靴も、買い物袋も、特に濡れた様子はない。
せいぜい、ちょっとした小雨の中を歩いて来た、という程度なのである。
「思いのほか、小降りだったわ」という彼女の言葉は、まんざら嘘でも強がりでもないようだ。
すると彼女の帰宅を待ってましたとばかりに、再び雨風が強まる、というのが、
不思議ながら通例である。
どういうわけか、彼女の真上だけは、雨雲が避けて通るらしい。

そんな時、つくづく思う。
今や母は、最強の晴れ女である。

2012年3月6日火曜日

正直者

半年に一回、歯の定期健診を兼ねて、クリーニングを受ける。
まず、先生が私の口中を一通り眺め、何の武器も手に取らず、
「キレイにしてますね」と言ってくれると、この上なくホッとする。

今回は、この決め台詞のあとに、念押しのような質問が続いた。

「デンタルフロスは、毎日してますよね?」
「えぇ、昨夜から毎日、いえ、毎食後にしてます!」
「昨夜から、ですか?」
「はい。昨日の晩ご飯の後と、今日の朝ご飯の後と、昼ご飯の後、歯磨きもフロスも『親の仇!』ってくらいにゴシゴシやりました」
「昨夜より前は?」
「昨夜以降の歯磨きは気合を入れたので良く覚えているんですが、それ以前の歯磨きはどうも印象が薄くて」
「正直なんですね」
「はい。それだけが取柄なんです!」
「まあ、口の中を見れば分かるんですけどね。……正直なのは良いことですよ」
「!」

なんと歯医者さんは、口の中を見れば、その人が正直かどうかまでも分かってしまうらしい。
しかも、その歯医者さんが太鼓判を押してくれた。
正直なのは良いことだ、と。

よし、これからも正直に生きていこう。
そして半年後には、「殆ど毎日フロスをしました!」と言えることを目標にしよう。