ネイルサロンでのモデル初体験のほかにも、「写真、よろしいですか?」と聞かれたことがある。
かつて携わっていたプロジェクトは、とてもオカタイ内容であった。
しかしある年、何故か、その活動を、何と、あの東京モーターショーで小間展示した。
片隅で、ヒッソリと、目立たず、ではあったが、確かにあの華やかな会場内にブースが設けられた。
当然ながら、無人ブースというわけには行かない。
当然ながら、無人ブースというわけには行かない。
留守番が要る。
私も会期中の二、三日、説明員の名札をつけて、ブースの留守番に借り出された。
会場の華やいだ雰囲気を全く無視したかのような、四角四面のスーツに身を包んだ私は、
会場の片隅のブースの、そのまた片隅で、ヒッソリと、目立たないように、立っていた。
展示されたモノは、
展示されたモノは、
私よりも背の高い、白くて大きな四角い箱や、
黒くて円筒形の重たい塊、
それに、黒っぽくて大きくて重たい箱などだった。
会場の雰囲気を全く無視したかのような、四角四面のブースだった。
「難しい質問をされませんように」と祈っていると、一人のビジネスマンらしき紳士が近付いてきた。
「難しい質問をされませんように」と祈っていると、一人のビジネスマンらしき紳士が近付いてきた。
「すみません、写真、よろしいですか?」と手に持ったカメラを少し持ち上げ、
爽やかな笑顔で、白くて大きな四角い箱を指し示した。
「どうぞ、どうぞ、360度どこからでも、遠慮なく撮ってください!」
彼は嬉しそうに箱を眺め回し、数枚の写真を撮り、去って行った。
爽やかな笑顔を見られるかどうかは別として、
爽やかな笑顔を見られるかどうかは別として、
こんなことは、ブースの留守番をしていると、よくある。
今度は、大学院生らしき青年三人組が来た。
今度は、大学院生らしき青年三人組が来た。
そのうちの一人が歩み出て、私に声を掛けた。
「あの、写真、よろしいですか?」
「もちろんです!どうぞ好きなだけ」
すると彼は、持っていたカメラを友人の一人に手渡し、私の隣に立った。
「写真って、私の・・・ですか?」
「すみません。お嫌なら、無理に、とは申しません」
むげに断ってしまうには、あまりにも誠意が感じられた。
若い男の子と地味な私の二人は、地味な展示物を背景に、一枚の写真に納まった。
「本当に、どうもありがとうございました」
彼は写りを確認すると、丁寧に、少し照れくさそうに挨拶をして、仲間と一緒に去って行った。
三人の背中を見送りながら、つくづく不思議に思った。
ほんの少し向こうに進めば、プロフェッショナルのモデルさんや、コンパニオンさんが、
三人の背中を見送りながら、つくづく不思議に思った。
ほんの少し向こうに進めば、プロフェッショナルのモデルさんや、コンパニオンさんが、
華やかで見栄えのする、素敵な衣装に身を包み、
綺麗な顔立ちの上から、更に綺麗にお化粧をして、ポーズをとっている。
人口密度ならぬ、美人口密度がとてつもなく高い場所だ。
背景だって、カッコ良くしつらえてあるのが、ここからでも良く見える。
それなのに、なぜ、よりによって、こんな地味なブースで、こんな地味な私と、並んで写真を撮りたかったのだろうか。
それなのに、なぜ、よりによって、こんな地味なブースで、こんな地味な私と、並んで写真を撮りたかったのだろうか。
実は、幼い頃に亡くして顔も覚えていない母親の写真の面影と、私の様子に重なるものでもあったのだろうか。
それとも、母親でなく、姉だろうか。
いやいや、もっと別のいきさつが・・・。
それとも、母親でなく、姉だろうか。
いやいや、もっと別のいきさつが・・・。
名前も知らない青年の人生ドラマを勝手に作りあげたり、打ち消したりした。
あれは、なぜだったのだろう。
今でも、思い出すと不思議になる。
あれは、なぜだったのだろう。
今でも、思い出すと不思議になる。