2011年10月6日木曜日

写真、よろしいですか?

昨日のブログを読み返して、思い出した。
ネイルサロンでのモデル初体験のほかにも、「写真、よろしいですか?」と聞かれたことがある。

かつて携わっていたプロジェクトは、とてもオカタイ内容であった。
しかしある年、何故か、その活動を、何と、あの東京モーターショーで小間展示した。
片隅で、ヒッソリと、目立たず、ではあったが、確かにあの華やかな会場内にブースが設けられた。

当然ながら、無人ブースというわけには行かない。
留守番が要る。
私も会期中の二、三日、説明員の名札をつけて、ブースの留守番に借り出された。
会場の華やいだ雰囲気を全く無視したかのような、四角四面のスーツに身を包んだ私は、
会場の片隅のブースの、そのまた片隅で、ヒッソリと、目立たないように、立っていた。

展示されたモノは、
私よりも背の高い、白くて大きな四角い箱や、
黒くて円筒形の重たい塊、
それに、黒っぽくて大きくて重たい箱などだった。
会場の雰囲気を全く無視したかのような、四角四面のブースだった。

「難しい質問をされませんように」と祈っていると、一人のビジネスマンらしき紳士が近付いてきた。
「すみません、写真、よろしいですか?」と手に持ったカメラを少し持ち上げ、
爽やかな笑顔で、白くて大きな四角い箱を指し示した。
「どうぞ、どうぞ、360度どこからでも、遠慮なく撮ってください!」
彼は嬉しそうに箱を眺め回し、数枚の写真を撮り、去って行った。

爽やかな笑顔を見られるかどうかは別として、
こんなことは、ブースの留守番をしていると、よくある。

今度は、大学院生らしき青年三人組が来た。
そのうちの一人が歩み出て、私に声を掛けた。
「あの、写真、よろしいですか?」
「もちろんです!どうぞ好きなだけ」
すると彼は、持っていたカメラを友人の一人に手渡し、私の隣に立った。
「写真って、私の・・・ですか?」
「すみません。お嫌なら、無理に、とは申しません」
むげに断ってしまうには、あまりにも誠意が感じられた。
若い男の子と地味な私の二人は、地味な展示物を背景に、一枚の写真に納まった。
「本当に、どうもありがとうございました」
彼は写りを確認すると、丁寧に、少し照れくさそうに挨拶をして、仲間と一緒に去って行った。

三人の背中を見送りながら、つくづく不思議に思った。

ほんの少し向こうに進めば、プロフェッショナルのモデルさんや、コンパニオンさんが、
華やかで見栄えのする、素敵な衣装に身を包み、
綺麗な顔立ちの上から、更に綺麗にお化粧をして、ポーズをとっている。
人口密度ならぬ、美人口密度がとてつもなく高い場所だ。
背景だって、カッコ良くしつらえてあるのが、ここからでも良く見える。

それなのに、なぜ、よりによって、こんな地味なブースで、こんな地味な私と、並んで写真を撮りたかったのだろうか。
実は、幼い頃に亡くして顔も覚えていない母親の写真の面影と、私の様子に重なるものでもあったのだろうか。
それとも、母親でなく、姉だろうか。
いやいや、もっと別のいきさつが・・・。
名前も知らない青年の人生ドラマを勝手に作りあげたり、打ち消したりした。

あれは、なぜだったのだろう。
今でも、思い出すと不思議になる。