2012年10月14日日曜日

楽しむことを教えるポイント

「奥秩父地質ツアー」という、早口言葉のような集いに参加した。
地球科学を専門とするビッグな大学教授をはじめ研究者が3名、素人が数名、
『地質学』という切り口で、地球や自然に関するプチ講義を受けながら、
奥秩父の自然を観察し、散歩する、という、何とも贅沢な企画だった。

好奇心旺盛な紳士淑女に混じって、ハイキング目当てで参加した私も、
プチ講義の虜となるのに時間は掛からなかった。
「にわか地質学博士」気分で、目の前の地層や地形や岩の様子に目を凝らしては、
参加者同士で岩の種類や年代を言い当ててみたり、ハズレてみたりしては、
そのたびに、はしゃいだり悔しがったり、まるで子どもの一団ように無邪気に散歩を楽しんだ。

何度目かのプチ講義を終えた時だった。
「何か質問はありますか?」との先生の促しに、一人の女史がすかさず手をあげた。
「例えば、小中学生をここに連れてきた時、
地質学を楽しむことを教えるためには、何をポイントとして見せるべきでしょうか?」

文科系の高い教養を持ち、現在は「科学の楽しさを伝える」活動を続ける彼女の、
一途なまでの真面目さを、そのままに表したような質問だった。

先生は少し考えてから、ゆっくりと話し始めた。

「僕達人間は皆、生まれながらにして自然科学への興味を持っていると思います。
ところが、残念なことに、
周りの大人から、見る対象や見方を規制されることにより、生まれ持った興味が潰されてしまう。
すると、面白いものだらけだったはずの自然や学問の世界に対して、心を閉ざしてしまう。
そこに残るのは、ただ指定されたHow Toに追従するだけの覚えこみの『お勉強』だけで、
自然も科学も学問も、発展も何もなくなってしまう。
だから、自然発生的な興味を大切にすること、せめて潰さないことがポイントでしょう。

もし、ある子が、石の形に興味を示したなら、形の似ているものや異なるものを探すのも良い。
石の色や模様に興味を示したなら、それを基準に石を分類してみれば良い。
そんな時、無理に岩石としての種類や組成や年代を教えなくても良いんです。

そのときの、その子の興味と、一緒にいる自分の興味と、両方を尊重してはどうでしょう。
私自身、自分の興味に基づいて今回のコース選定をし、資料を準備し、話をしている。
これがもし、皆さんの興味と響き合うことができたらとても嬉しい。

ご質問に対して、直接の答えにはならないかもしれませんが、
自然や学問、周囲の全てに触れるときに大切なのは、生まれたての子どものような目線です」


参加者の殆どがミドル・エイジ(またはそれ以上)のこのツアーにおいて、
知らぬ間に、子どもの一団のようにはしゃぎながら散歩を楽しんでいたのは、
奥秩父の自然のなせる業とばかり思い込んでいた。
しかし、「あなたの興味と私の興味を互いに尊重し、響き合わせましょう」という、
この先生の、「楽しむことを教えるポイント」によるところも大きいのだろう。

どっしりとした体つきの先生が、なお一層どっしりと、頼もしく見えた。