あれから、20年も経つだろうか。
当時、私のお兄さん的存在だった方が通い始めた高校の文化祭に出掛けた。
面白いくらいに人気者のお兄さんは、どの出し物を訪ねても、そこには友達がいて、
声を掛けたり掛けられたり、飛びつかれたりしながら、片っ端から案内してくれた。
その中に、「コンピューター部」の出し物、『占いの館』があった。
占い師なのか漫才師なのか、悩ましい格好をしたコンピューター部員が、
「あなたは本当の自分を知りたいですか?」と尋ねた。
「はい」と答えて申込書に生年月日を記入すると、
俄か占い師の部員さんがコンピューターにそれを入力し、印刷した星占い結果を手渡してくれた。
その場で、一緒にいた仲間と読んでみた。
その場の全員が、揃って同じことを言った。
「すごく当たっていそうな気がする」
はて、当たっているのか、いないのか。
本当の自分というのが何者なのかを知り得ずにいた、当時の私としては、
これを、当たっているともハズレているとも、判断することができなかった。
「何十年か経ったら、これが本当に当たっているかどうか、もう一度見てみよう」
私はコッソリ心に決め、その紙を大切に取っておくことにした。
それが、このたび発掘された、一枚の真っ白な紙片だ。
なぜ、真っ白なのか?
実は、この紙みたいに真っ白で、何にも定まっていない、ということだろうか。
そう考えると、自分自身をむしろ無限の可能性をはらんだ存在、と見ることもできる。
おや?
しかしながら、この紙、20年前には確かに印字されていた。
すると、なぜ今、真っ白なのか?
なぜなら、その出力用紙は、感熱紙だったからだ。
20年の歳月を経て、感熱紙の印字はすっかり消えてしまった。しかしながら、この紙、20年前には確かに印字されていた。
すると、なぜ今、真っ白なのか?
なぜなら、その出力用紙は、感熱紙だったからだ。
何とかして、読めないものだろうか。
透かして見たり、光の当たる方向を変えてみたり・・・
必死になって、アレコレ試していると、
ある光の当たり具合で、ある方向から眺めた時だけ、やっとのことで判読できることが分かった。
***** コンピューター 占星術 *****
VITALITY(行動力)
困難や苦しみに負けない強さを持ち、たくましい行動力と鋭い直観力で人をひきつける。
(+)感情が豊かで気前が良く、社交性があり、人に好かれる。情熱家。
(-)我がままで強情で無責任で快楽に溺れる。つまらぬことに拘りすぎる。
SPECIALITY(適正)
外科・産婦人科・歯科系統の医師。芸能界でもユニークな存在。旅行会社・スチュワーデス・作家・画家・企画部門・料理家などの水商売。旅館・アパートの経営。元来は体制に迎合しないタイプ。
さわやかな弁舌と明敏な頭脳を必要とする仕事。税務家・弁護士・銀行家・牧師・セールスマン・貿易商。
ORIGINALITY(独創性)
高尚な理想的感情の持ち主。やや現実性に欠ける。ツキが損なわれていると尊大。身勝手な派閥的な考えが強い。
PERSONALITY(個性)
義理人情に厚く、サービス精神に富む。愛情が細やかで異性には親切。お金が蓄まると健康を損ないやすく、精神的に安定を欠くようになる。
正直で素直な性格。神経が繊細すぎて不安と心配の種が絶えない。ロマンチックでセンチメンタル。
LOVE(恋愛)
理想家のため異性の範囲が限られやすいが、精神的に深く結び合うことができる。
非常に理知的な性格で、主義主張に一生をささげる。
HEALTH(健康)
過労になりやすく、事故にもあいやすい。神経痛・神経衰弱・リューマチに注意。
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さて、当たっているのか、いないのか。
20年経った今でも、本当の自分というのが何者なのかを知り得ずにいる私としては、
これを、当たっているともハズレているとも、判断することができない、
ということが分かった。
今はこのまま、そっとしておくこととして、また20年後にでも読み返してみよう。
子どもの頃は、大人になったら何でも分かるようになる、と信じて疑わなかった。
現在、子どもの頃の私から見たら、十分すぎるほど大人になった私は、
分からないことだらけの毎日を楽しんでいる。
そして、この真っ白な紙片を介して、20年前の私と顔を合わせたことを、面白く感じている。
今から20年後、これを読み返した私は、どんな心持ちだろう。
「当たっているか」を判定するでもなく、
「そんな検討をするだけの価値があるか」を判定するでもなく、
現在過去未来の自分達が顔を合わせたことを、やっぱり、一緒に面白がってくれると良いな。