2012年2月16日木曜日

トラちゃん

友人の二歳になるお嬢さんが自分の名を呼ぶと、たまに「トラちゃん」と聞こえることがある。
未だ不安定な発音のため、本名と少しばかりズレた結果、こうなる。

時折、彼女は私のことを『ママ』とか『おばあちゃん』とか呼ぶ。
頻繁に呼ぶ名前がつい口を衝いて出るのか、女性の呼び名がこんぐらかるのか、
あるいは、私の名をド忘れするのか、その辺のところは解明できていない。
しかし、小さな子どもの澄み切った良く通る声で、
「ママ、こっち来て一緒に踊ろう!」「おばあちゃん、バナナの絵描いて」なんて言われると、
呼び名が違ったことなどお構いなしで、妙に心弾んでしまう。

そんな彼女と二人で、時の経つのも忘れ、夢中になって遊んでいたときのことだ。

彼女は突然顔を上げて私を見ると、驚いたように「おっ、おっ、おっ」と、小さく声を詰まらせた。
そして私を指差し、「これ、何?」と尋ねた。
「○○さんよ」私は自分の名を答えた。
すると彼女は、安心したとばかりに重ねた両手を胸に当ててニッコリと笑い、
膝を深く曲げながらこう言った。
「トラちゃんね、○○さんと一緒に遊べて、とぉ~っても嬉しい!」
言い終えると同時に、小さく一つ、ピョンッと跳ねた。

たとえ私の名を忘れたとしても、もし他の用件だったなら、
呼び名を省略できたろうし、『ママ』や『おばあちゃん』で済んでしまったかもしれない。
しかし、このセリフばかりは、
どんなに好きな 『ママ』や『おばあちゃん』の呼び名を使っても、代用が効かない。
相手の名前を言わなければ意味が違ってしまうのである。
だからこそ彼女は、それを間違いなく確かめてから、私に気持ちを伝えてくれた。

大好きなトラちゃん、ありがとう。
私も、あなたと共に過ごせたことが、
嬉しくて嬉しくて、嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて、とぉ~っても嬉しい!
また一緒に遊ぼうね。