ラジオをつけると、音楽が流れてきた。
んっ?聞き覚えがあるようだ。
いやいや、聞き覚えどころではない。とても耳慣れている。
何だっけ、えーっと・・・
そう思うが早いか、パブロフの犬よろしく、口中では食事の準備が整ってきた。
同時に、私の心は、けんちん汁で満たされた。
お腹ではなく、飽くまでも心だけだけど。
そうそう、これは、あの定食屋さんでいつもかかっている曲だ!
滅多に外食をしない私が、年間で20回ほど通う定食屋さんが一軒だけある。
そこで出されるけんちん汁が、大のお気に入りだ。
そして、そこでいつもかかっている曲こそが、今まさにラジオから流れている、この曲だ。
わーい、けんちん汁のテーマソングだ!
この曲を聴いたからと言って、目の前にいつものけんちん汁が出てくるわけではないけれど、
なんだか嬉しくなってきた。
きっと、この曲を作った人は、けんちん汁を思って作ったのだろう。
きっと、歌い手さんも、けんちん汁を思って歌っているに違いない。
そして、きっと、今、ラジオから流れるこの曲を聴いて、けんちん汁を思っている人が、
日本のどこかにいるかもしれない。
そんなみんなは誰だって、たとえ顔も名前も知らなくたって、みんなみんな、心の友達さ!
そう思うと、わくわくした。
歌が終わると、ラジオは言った。
「ただいまの曲は、レディー・ガガの、・・・」
なんと、
けんちん汁のテーマソングは、レディー・ガガの持ち歌だった。
レディー・ガガも、けんちん汁が好きなのかな?
うん、きっと好きだ!
きっと、レディー・ガガも、あの定食屋さんが、あのけんちん汁が、好きなんだ!
だからこそ、あの定食屋さんのために、あのけんちん汁のために、
この曲、つまり、けんちん汁のテーマソングを書いて、そして歌ったんだ!
どういうわけか、勝手に確信してしまった。
それからというもの、レディー・ガガを、秘かに「心の友」と呼んでいる。