2012年4月2日月曜日

ぢんちょうげ

「あ、この匂い」

仕事場へ向かう途中、思わず足を止めた。
「なんだっけ、なんだっけ、この匂い」
空を見上げて、記憶を辿って、辺りを見回しながら、目線を下げていくと、
「そうだ!」と思い当たるのとほぼ時を同じくして、
少し先に咲いているぢんちょうげが目に入った。

毎年、最初にぢんちょうげの匂いを感じた時、
どういう訳か、すぐにはそれと分からずに、
「なんだっけ、この匂い」と思う。

あまり派手さのない花に鼻を近づけ、思い切り息を吸うと、
身体の中いっぱいに、甘い匂いがしみこむようだ。

再び歩き出すと、再び甘い匂いがしてくる。
辺りを見渡すと、もう少し先にもぢんちょうげが咲いている。
そちらの花にも鼻を近づけ、おいしい匂いを思い切り吸い込む。

またまた歩き出すと、またまた甘い匂いがしてくる。
おいしい匂いに誘われるまま、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ、
くんくん嗅いで回った。

いつもなら、徒歩7分の仕事場への道のりに、15分以上かかった。

毎年、ぢんちょうげの咲くこの季節、
どういう訳か、どこへ行くにも時間がかかる。