第二の家族として親しくしているお宅がある。
そこのママは、世のお母さん達の例に漏れず、飛び切りの料理上手である。
中でも、彼女の作る塩漬けキャベツは最高だ。
夏休みだ正月休みだと滞在しては、「美味しい!」と、せっせと食べてばかりの私に、
彼女は飽くことなく、料理を仕込もうと試みる。
お蔭で、料理に対する苦手意識の強い私も、さすがに漬物くらいは時々するようになった。
私が遊びに行くと、ママは必ず尋ねる。
「私のレシピで何か作った?」
「うん、塩漬けキャベツをね」
「どうだった?うまくいった?」
「・・・」
大好きな塩漬けキャベツを、東京に帰って、自分でも作ってみた。
ママのお手伝いをしながら一緒に作った時と同じように、自分でも何度か作ってみた。
しかし、ママと同じようにしているつもりだけれど、何かが違う。
何が違うのだろう?
「酸っぱくなった?」ママの質問は続く。
そうだ、酸っぱくないのだ。
同じようにしているはずなのに、なぜ酸っぱくならないのだろう?
① まず、キャベツを刻む。
② 刻んだキャベツを塩で揉む。
この時私は、ポイポイと口にも放り込む。
③ 揉んだキャベツを容器に押し込む。
この時私は、容器に入りきらない分を、やはり口の中に押し込む。
④ 冷暗所に置く。
⑤ キャベツに呼吸をさせるため、毎朝、箸でプスプスと穴を開ける。
この時私は、プスプスしながら箸でつまんで、口にもチョイチョイ入れてやる。
⑥ およそ3日後から、キャベツが酸っぱくなり始める。
そう、3日後あたりから、酸っぱくなり始めるはずだ。
しかし考えてみれば、実際のところ、3日以内、酸味が出る前に平らげてしまっていたのだ。
「酸っぱくなる前に、全部食べてた」私は答えた。
そこに、ちょうど帰宅した弟くんが言った。
「つまりね、僕達はお腹が空いて、料理どころじゃないんだよ」
「塩漬けキャベツを作るコツが分かったわ!」
あっという間にご馳走をテーブルに並べると、ママは言った。
「東京に帰っても3日間お腹が空かないように、ここでタップリ食べておきなさい!」
あれから、早数ヶ月が経つ。
筆不精な私に痺れを切らしたママからは、
「5分間だけ余計にPCの前に座って、メールで近況をよこしなさい!」と電話があった。
さて、しばらく振りに、塩漬けキャベツに挑戦してみるか。
「コツのお蔭で、酸っぱくて美味しいのができたよ!」と、ママにメールを書けるように、
まずは、腹ごしらえと行こう。